昨年、オーストラリアの Babaganouj と行ったツアーで初来日を果たした、LAを拠点に活動する Dre Babinski によるソロ・プロジェクト「Steady Holiday」。今年、レーベルを名門 Barsuk Records に移籍、日本では引き続き 2670records よりリリースされたNEWアルバム「Nobody’s Watching」で、さらなる完成度の高い作品を作り上げ、様々な音楽メディアからの高評価を得た彼女。今回は、そこに至るまでの軌跡を辿るべく、昨年の来日ツアーの際に行われた、未公開のインタビューを公開!
Interview & Text by Aoi Kurihara
Photo by Takazumi Hosaka
━━ 「Terror」のミュージックビデオが2017年のレイダンス・フィルムフェスティバルでベスト・ミュージック・ビデオに選出されていて、内容はディヴィッド・リンチ作品を想起させるようなダークな雰囲気になっていますが、実際のところは何にインスパイアされているでしょう?
Steady Holiday(以下S) : 実際のところはこの曲にインスパイアされたの。実はこの曲は、アメリカ、アメリカの全てで起こっていることを歌っているの。今、人々は他人や他のカルチャーをとても恐れているの。アメリカの市民は、移住民たちや他のカルチャー、リベラルな人々に恐怖を持っているの。そして隣人、近くに住んでいるけれど、知らない人たちを恐れている。この曲はそういった恐れについて歌っているの。
そのミュージックビデオについては、登場人物はこの曲の語り手で、彼女は何かに恐れている。でも少し面白くておかしいホラー映画のような仕上がりになっていると思うわ。このビデオと曲のメッセージはまさにアメリカで今起こっていることをメッセージとしていると思う。
━━ アメリカという国は、閉鎖的というよりは、他のカルチャー等にオープンなイメージでしたが。
S : 今、それが変化してきていると思うの。トランプが当選したのもそれが現れているんじゃないかしら。そして彼が大統領になったことで外のものへの怒りとか恐れが強くなってきているように思う。
━━ なるほど。あなたは日系アメリカ人なわけですが、それが理由で差別だったり、人々から恐れられたりするというような経験はありますか。
S : いいえ、アジア人はアメリカ人の怒りや恐れのターゲットにはなってないの。ムスリムの人たちやメキシコとかの南米の人たちがその対象になるんだと思う。それが最近は悪くなっていっていると思う。だから私はそういう経験はないの。あと、アジア人やアジアからの移民の人たちはそんなに差別を受けてないと思う。たぶんだけれども、高い教育を受けている人が多いからかもしれない。
━━ 「Terror」が収録されている同名タイトルのEP『Terror』のアートワークもあなたが覗き込んでいる少し不気味な雰囲気ですが、これも曲と同じコンセプトなのでしょうか。
S : ええ、そうよ。同じように隣人、開かれたドア、外者への恐れを描いているの。
━━ これ以外にもあなたのミュージック・ビデオはシネマティックで興味深いものが多いですね。同じ制作チームが制作しているのでしょうか。
S : そうね。「Terror」の監督も務めたJoseph Armarioは、まだ映画の作品はないんだけれども、コマーシャルの監督であったり、他のミュージックビデオ(DJ ShadowやBeckの映像も手がけている)を担当しているの。本当に天才よ。
━━ それらのミュージックビデオはどのように制作されているのでしょう。最初にあなたがアイディアを持ってくるのでしょうか。
S : 監督とは友人だから、まず一緒に過ごすことが先ね。一緒に作り上げていくことが好きだから、まずビールを持ってく(笑)。それでどうしようかというアイディアを練ってくのね。でもどういう手法で撮影するか、とかの技術的な部分は全部彼に任せているわ。
━━ あなたがスケートボードに乗る姿を映されている「More Than One Way」のビデオも良いですね。
S : 「Terror」のビデオをラスベガスで撮影した時に、これも撮ったのよ。監督とシネマグラファーが一緒で、私たちは最初、特にこれについてアイディアはなかったし、そもそもミュージックビデオを作ろう、と計画して撮ってたわけではないの。私たち3人でなんとなく撮ってたわけ。ちょっとパンクでしょ。
━━ ミュージックビデオからもわかるようにあなたは映画ファンのようですが誰か好きな監督や作品はありますか。
S : 詳しいというよりただのファンよ。ポール・トーマス・アンダーソンが好きね。彼の作品では『マグノリア』とか『ブギーナイツ』が好きだわ。あとは古いフランス映画とかも好きで、『シェルブールの雨傘』とかもお気に入り。カラフルな映像やライトにインスパイアされるわ。
━━ さて、あなたの音楽的なバックグラウンドについても訊いていきたいのですが、10代の頃からオーケストラに所属していたのですよね。いつから楽器を始めたのでしょうか。
S : 10歳ぐらいの頃にヴァイオリンを”オーケストラ”でヴァイオリンを始めたの。本物のオーケストラ、ではなくて(笑)、公立の学校の音楽クラブみたいなね。真面目なやつではなくて。中学の時にもヴァイオリンをやっていて、ハイスクールでも音楽をやった時に17歳で高校を卒業した時に勉強をストップしたの。そして、ロック・バンドを始めたのよ。それはすごく良かったわ。フォークっぽい感じのロックの曲ね。アコーディオンとかヴァイオリンとかも入ってたわ。
━━ なるほど、そこからあなたの今の音楽スタイルはどのようにして形成されたのでしょうか。
S : うーん、それは無意識ね。私はこれをする必要があったと思う。色々な形態のバンドを経て、いつもそれは楽しかったけれども、自分のクリエイティブな面では満足できなかったし、自分とは異なるものとかに対して理解するのが大変になっていた。一緒にやってきていた人々のことは好きだったけれど、これ以上できないと思ってそのバンドを辞めたの。それでセラピーに行き始めて、鬱な気持ちを直そうとしていた。その時に音楽を書いたりするのが助かった。自分を向上させるために、自分の音楽を作る必要があった。
━━ あなたのこのソロプロジェクトの名前はどこから由来しているのでしょうか。
S : Steady Holidayという名前は、私を現したジョークなの。私の頭の中はいつだってホリデーだから。いつだって休みのことを考えちゃうのよね。
━━ あなたの音楽スタイルは、60年代のフレンチポップの影響があるのかなと思っているのですが実際のところどういった音楽やアーティストに影響されたのでしょう。
S : ええ、フレンチ・ポップは好きよ。ゲンスブールとかね。実のところ私はそんなに音楽を聴いているわけでないのよね(笑)。あとはブラジリアン・ボサノヴァとか好きなの。フレンチ・ポップのアティチュードと似ているからね。
━━ アメリカの音楽だったり、あなたの祖母が日本人だと思いますが、日本の音楽の影響はないのでしょう。
S : うーん、あまり、かな。日本のアーティストは全然詳しくないわね。私の音楽は音楽からの影響よりももっとカンバセーションだったり映画だったりから影響を受けているかもしれないわ。もちろん音楽は好きなんだけど。
━━ 次の作品『Nobody’s Watching』について訊かせてください。
S : 最初のアルバム『Under the Influence』は、自己表現についてで、自分が自分自身を理解する為のアルバムだった。でも、次の作品はとても違うわ。リリースできることをとてもエキサイティングしている。音もだけれど、歌詞が特に違うのよ。前作は私の感情を表していてとてもエモーショナルでパーソナルな内容だった。でも、私はもう悲しくなんてない。だから今もっとストーリーを描けるようになったの。ポリティカルな内容が多いんじゃないかしら。アメリカが今どうなっているか、何が起きているかについてが、もっともインスパイアされていることね。
━━ なるほど、それは興味深い内容ですね!ありがとうございました。
S : アリガトウ!
【最新アルバム: Nobody’s Watching 】
Nobody’s Watching
by Steady Holiday
- Release Date: 2018.09.12
- Formats: CD, iTunes(Japan) / TSSO-1041
- 歌詞カード付属
- 日本盤のみボーナストラック1曲収録(全11曲収録)
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TRACK LIST
- Flying Colors
- Mothers
- Who’s Gonna Stop Us
- Nobody’s Watching
- All Aboard
- Love and Pressure
- Eastern Comfort
- Trapping Season
- Exit Song
- Desperate Times
- Nobody’s Watching (Demo)
(※11. 日本盤のみのボーナストラック)
【リリース詳細】http://2670records.jp/?p=8790
【アーティスト情報】http://2670records.jp/?page_id=6651